インタビュー

未来のラジオとテレビ

2010年取材 2014年加筆

深尾康史


Q インターネットで聞けるラジオ、RADIKO、重宝しています。

深尾 国内のInternet Protocol simulcast radioの草分けはRADIKO(ラジコ)と呼ばれてはノイズが無いので特にAMラジオ世代にはとても人気があります。通信網を使っての放送なので、技術的、著作上、またエリアなど未だ実験中です。IPV6網やIPV4網に対応するように、また端末機器に対しガジェットなど進化しています。

Q 当初は、ときどき途切れるのでストレスがありますが。

深尾 それは2008年開始当初ネット上の接続口(容量)がまだ少なく、接続ユーザーが増えると、ダウンロードする容量が落ちて、パソコンでのバッファリングを失敗していると思います。回線の高速化が進み安定していますが、特定の時間帯では問題が出ることもありますね。 

Q どのぐらいの方が利用しているのでしょうか。

深尾 開設当初、放送電波の1%が聴取率と言われ、関東で約176千世帯も、40万人でしたが、様々な機種にも対応し民放放送に加え、NHKのIPネットラジオ らじる・らじる の全国向け(海外はNG)が、東日本大震災を機に試験開始を始めたこと、仙台・東京・名古屋・大阪の4拠点からR1・R2・FMが聞けるようになったことで、2014年4月には1000万人台となっています。 

Q iTuneで聞けるインターネットラジオは、すごい数なのでBGMとして利用しています。有線放送のチャンネルのように、流す曲はジャンルにこだわっていますね。

深尾 iTuneをはじめインターネットラジオのチャンネルはすごいです。ジャンル別に世界中のラジオが聴けます。著作権処理の考え方が国により違うので、送り手側には制約があり違いますが、聞くのは自由です。日本でもコミュニティFMの団体CSRAでサイマル(同時)放送をしています。ライツ(著作権)処理は分かりませんが、映像も当たり前になっています。

Q これらは、どのようにして営業できているのでしょうか。

深尾 RADIKOなど、無料放送で、現在のところ既存の電波による売り上げで難視聴、防災対策の意名目で無料放送していて、ラジオ再送信扱いで流しています。2014年月からはradiko.jpプレミアム(有料)放送が開始され、地域に縛られず希望者には有料で全国加盟ラジオ放送局が聞けます。
前述しましたように、ラジオ放送はビルなどによる電波遮へいや都市化による雑音増などで、受信環境が著しく悪くなって、プログラムの内容とはかかわりなく、聴視者離れが進んでいます。2005年にインターネットとラジオのメディア別広告売上が逆転しました。サイマル放送は新たなメディアではなく、再送信ラジオの聴ける環境インフラと考えられます。追加のスポンサーが付くわけでなく民放の運営費持ち出し状態です。

Q 日本の放送局は瀕死の状態で、すでに廃業した局もありますね。

深尾 2010年9月末、愛知のFM局さんは開局から10年で止む無く廃業されました。CMの収入で無料放送をする経営は、景気に大きく左右されリーマンショック以降、大変厳しいものがあります。放送事業は、国民の有限な電波財産を利用するので、電波帯の枠組みがある免許事業となっています。5年毎の再免許では新たに見直し、新規参入も可能となっています。今回の事例のように、FM局は廃業も可能となっているようです。そのことで、電波空き枠ができたので、所定の条件を満たせば新規参入も可能と思いますが、名乗が上がらなかったというのは、新規で参入するには経営上、難しいものがあったのではないでしょうか。先日、廃業された局の方とお話ししたところ、経営の苦渋の選択だったとのことでした。
テレビ、ラジオ共、地上系放送局は経営的に厳しいものがあります。東京を除く局は特にリーマンショック以降立ち直ることなく、広告のWeb化の波の逆風に赤字脱却できない局が多く、廃業できれいに清算できるのは良い方ではという見方もあります。

Q 番組の内容がどこも同じで飽きられてしまっています。もっと、生活に役立つ番組を作ってくれればいいのですがね。

深尾 全く、そのとおりですね。放送局で番組を企画し制作していた頃、CMで番組が作られていた頃、ドラマと舞台中継も生放送だった頃、委託制作は不可能でした。記録・編集の機器の進歩が番組の委託制作を可能とし、パッケージに番組が入って制作されるようになり、視聴率競争が制作業者間で数字(視聴率)の出る真似(パクリ)番組を増大させてしまったのではと感じます。
CMも企業広告から商品販促、各社スポット広告になり、直接視聴率数字に左右される状態です。 残念なことですが聴視者も数字で内容を判断しているのが現実です。
Webでもランキングで数字に流される行動が流行っています。
ベーシックな生活情報は演出の中で、あるある実験型や知的好奇心型に変化して、これらも金太郎飴化しているように感じます。志を持って制作している人も多いのですが、目立つところは、ご指摘のとおりですね。

Q 結局、下ネタとお笑い。

深尾 低迷時代に、茶の間への笑いの提供は必要と思いますが、しかし作り手のネット情報のパクリ、内輪話、裏ネタ、軽蔑の笑いは別です。よく話題になるのが、創り手(制作者)、話し手(出演者)以上の客(視聴者)は付かない、ということです。
裸の出る番組は20年前に比べ減っていると思います。80年代が文学的とは言いませんが、近年、直接的な下品な表現が多くなっています。teen(T=10歳代)をターゲットにした番組創りも要因で、ドラマもタダだから見る視聴者に製作の甘えが手間とコストのかからない方向へ進んでしまったように思いますね。一時代を築いた歌番組、野球、ゴルフ、プロレスなどの番組が著しく減っています。お金と手間のかかる生放送が減って、同時間共有の共感が持てないのも一因と思います。パブリックビューイングは、放送局が生放送を無くし時間共有で共に楽しむことを減らした結果、場があれば集まる人がいる証明で、テレ・ビジョンです。

Q 最近、テレビをほとんど見なくなってしまいました。ニュースは夜の9時のNHKだけで充分。検察特捜部のように粗筋を自分たちで作って、そこにあてはまるように真実の一部を切り取って、対立、紛糾、論争をもてはやしているだけでは日本をよい方向にリードできないですね。

深尾 残念ながら指摘のとおりと感じます。勉強不足のコメンテーター、お笑い系タレントの野次馬的評論のニュースは見る気が起こりませんものね。報道は自由、客観、平等、両論報道を目指したいものです。 Web上で24H世界のニュースが見られる時代です。SNSの普及は時間が遅れ操作されたTVに対し、無責任ながら個人リアルを発信できる時代になったことの証明です。身内にも、いち早くSNS時代に気づき、生活の安定した通信社を離れた者がいます。

Q BSの現状はどうでしょうか。

深尾 2011年7月地上波TVと共にBSアナログも終わりました。2000年位スタートしたBSデジタルは、デジタル化したコンテンツの流動性から、これからもますます、空から効率的に電波を降らし続けるでしょう。まだチャンネルに予備もあり4K・8K化や国際戦略的にも大切な位置付けとなっています。
因みに、BS・CS・地デジの3波デジタル受像機は基本同じ方式で受信しています。ですから、2000年からデジタル放送しているBSの受像機のほうが、2004年スタートの地デジ受像機より多い現状です。地デジ電波は直進性の強いUHFになり、山間部等の一部電波の届かないところがあります。 衛星からの放送は山間・離島にとって大切な電波なのです。
また、高品位化は進化し続け2014年6月からはCSで4K放送「Channel 4K」の実験も始まりました。

Q 我がマンションも1000万円掛けて、全戸に光ケーブルが配線されました。そうでないと若者が居住しないですね。J-COMも無料で回線を敷いてくれて、地上波放送を全戸に無料配信して、有料放送に手を伸ばすように仕向けています。

深尾 戦前はNHK、戦後は民間放送が加わりマス情報を送り続けて約60数年になります。水・電気・ガスの3大インフラが各戸に配られ、インターネットが本格普及し始めた2000年頃には、4大インフラとして情報インフラが加わり、整備が進んでします。
私の記憶で、30年以上前(1980年頃)生駒の光ケーブル実験(Hi-OVIS)に、中継協力で参加していたとき、各戸に光ケーブルを引きわざわざテレビを見るなんて、もったいないと思っていました。当時はまだまだ電波聴取で、共聴も同軸ケーブルでした。「光は西から」というキャッチ広告もありました。
NTTの前身が、メタル線にこだわりISDNやADSLを薦めたことで10年も光化が遅れたとい聞きます。地デジ普及の中で、無料の電波を望んでおられる方の多さに驚きます。電気と同じように光が配られる日も遠くないと思います。そうNTTは2025年にメタル系電話を廃止するようです。ISDNもADSLも無くなるようです。
光ケーブル化と多メディア化はますます進むでしょう。J-COM・USENの売り上げは関東KEY局に並び、オンデマンド放送機能ではレンタルビデオ屋、カラオケ屋、映像図書館が足を運ばなくても家の中にあるようなものです。2000年からはカンファタブル体感社会ですから、2011年震災以来、テレビ電波もラジオと同じように災害に強い防災メディアとして、世帯から個人や移動体を主にすることになりました。移動体等に送っているワンセグが例です。移動体からさらに個人、ウェアラブル化も進んでいます。
そう、山間部のデジタル中継所が出来てすぐ、豪雨で周辺の町全域が夜12時間停電しました。その時にワンセグが活躍、電池で見られるカーテレビと携帯電話があり助かったと、町からお礼の電話を頂き、災害時の情報の大切さを改めて感じました。

Q そのためには、スカイツリーも必要ということですかね。
さて、観客から料金を取る映画も演劇も面白くなってきました。テレビはどうなるのでしょうか。

深尾 衛星系の放送は、すでに有料放送で成功しつつあります。地上波は無料の歴史が長く、著作権(ライツ)との関係もあり当分、総花的な無料放送が続くのではないでしょうか。
NHKは無料放送ではなく、固定料金の有料放送です。
また、最近発売された「chromecast」は革命的な商品でUSBメモリの大きい目のユニットで、Web上の映像をHDで再現してくれます。今はまっていて無料でも沢山の動画があり、有料サイトだとレンタルビデオ屋さんは不要です。

Q そう、NHKは見放題の有料放送でしたね。無料の民放に小言を言うのは野暮です。

深尾 ネットはデフレ時代にできたメディアのためか?日本のネット接続価格は世界トップの安さで普及が加速したネット環境も、固定料金のインフラ有料サービスです。日本のホテルにあるテレビは無料が多いのですが、海外のホテルは高いですね。

Q 若者人口が減少しているので、これまでと同じ考えではダメでしょう。某名門私立学校は、学生確保のためにレベルを下げたら、学生の質が低下して、応募数が減少したということです。テレビも同じでしょう。

深尾 まさにそのとおりだと思います。広域化した時代に、勝ち組か負け組の2極化が進んでいます。BS・CSデジタルは全国、地上デジタルは地域ブロック、コミュニティは生活地域と、地域特性に合わせたきめ細かい良質の内容を送らないとダメになります。
私は、某大学とキャンパス内エリアワンセグ学内実験を実施していました。その内容は、放送部ではなく映像学科主体とした学生の制作で、双方向の情報の厚い番組となっています。高付加価値商品とコスト安商品の消費動向2極化の中で、求められていることを正しく認識しなしと、即失敗という結果が待っています。
京都のラーメン屋さんの盛衰は早いです。時間を掛け並ばないと食べられない店も、少し味が落ちたかと思うと、客もいなくなり、近年は味が戻ると客の戻りも早いです。ウンチク・レシピ・屋号より一番大切なのは「味と満足感」です。これと同じように美味しい番組を制作しないと生き残れないですね。

Q 放送にも、機材や性能の進化でなく、メディアとしての進化が問われています。

深尾 地デジ化など、放送のデジタル化は単に放送の伝送形式が変わったにすぎません。
激増する携帯端末や通信サービスのために、周波数の有効利用のために地上波デジタル化をしました。ハイビジョンは30年以上前、デジタル放送電波も2000年のBSデジタルに始まる技術です。60年近く親しんだ地上テレビの家庭への影響は大きいものがあります。この30年にも家庭の映像記録方式はベータ・VHS・8ミリビデオ・ミニDV・DVD・とブールーレイ・HDDと変化しました。
放送の番組歴史は生活情報、ニュース、天気予報に始まり、時代の窓、茶の間の窓として進化して成熟産業となったことが、聴率競争が娯楽化・合理化を進めてしまったように思います。
今後はワンウエイのマス放送から双方向が可能な通信(コム)との融合で進化すると考えらます。映像情報は歴史的に、映画館でのニュース映画上映、新聞ではテレビ・ラジオ欄によるINDEX化、そしてテレビ・ラジオの検索広告(ドットコムCM)もINDEX化が進んだように次のメディアへの移行、広告、情報はインターネットや携帯マルチメディアに見られるように、受動型から能動型検索に主流は移行しています。

Q ITビジネスに追いついていかなければならないのですね。

深尾 国際標準化の中、無料の情報とバナー広告収入等で代表的なグーグルなど企業形態は、放送の広告構造と同じです。Webは双方向能動メディアなので法規制も少なく、直接購買やデマンド対応などAmazonにみるように能動型情報検索ビジネスの時代へとシフトし、近年は個人嗜好情報をもとに企業プッシュ型も増えているように思います。
アナログ地上放送が終了し、その跡地電波に携帯マルチメディアのNOTTV(notテレビ)のデジタル放送サービスが開始されています。また通信の高速は目覚ましく進みweb上の映画・音楽・番組の自由選択が進むこと、デジタル化でコンテンツの流動化が進むことで、聴視者の選択により多様化と淘汰が進むのではないでしょうか。

Q 今はその過渡期なのですね。どうやら未来が見えてきました。

深尾 そうですね。スピード感のある過渡期ですね。未来のことは、過去に学ぶことと思います。メディア進化勝手考「25年進化論」では、占有期20年、創成・衰退期5年と仮定、SP・LP・CD・VHSなど、メジャーな記録メディアは25年で入換わってきました。1950年代は、音声・映像の電子化による情報共有できるインフラができ、50年をかけて成熟、その間にWebNETが誕生し、2000年に情報インフラの本格デジタル化が進み、2011年のアナログ終了は放送通信のボーダレスデジタル化へエポックポイントで、2025年に向け変化は加速すると考えます。2014年4KTV放送実験が始まり、2020年のオリンピックまで高精細化、移動体からウェアラブル(小型化)など進化を続けると思います。

Q ドラえもんがいるみたいに、夢が瞬く間に実現できてしまう時代になりました。

深尾 20年前に今の携帯電話市場、インターネット市場を語れば馬鹿扱いされたものですが、現実では携帯端末での情報交換(SNS等)では画像も扱え、動画も多くなっています。2010年から始まった「ワイヤレスジャパン」というイベントでは。モバイル・ワイヤレス社会への提言がされており。救急、救助、運送、TAXI、自販機、が営業マンの個人端末の小型化、ウェアラブル化の進化を見るに、ドラえもんの未来提案も夢物語でありません。

Q 未来の創造は、次から次へと途絶えることなく続いていくのですね。

深尾 私の記憶にマルチメディアテーマの1994年のエレクトロニクスショー(現CEATEC)で、10畳ほどのモデルルームにタワー型PCのハードデスクサーバーがあり、テレビ映像や情報端末をメニュー選択形式で100インチの壁ディスプレーと対話していて、とても印象的でした。当時DVDが出たところで、近いうちに現実になると思いましたが、放送業界で感心を持つ人は皆無でした。2014年、現在の我が家は100inchのHD映像、HDD/B-rayサーバがあり、Web映像はUSB形状のchromecastユニットでHD映像が手軽に視られます。この状態は20年前の想像をはるかに超えています。制作系も同様に進化して、個人でのHD動画記録、伝送も当たり前となりデジタル情報の多様化は爆発的な進化を続けています。未来を語り出したら切りがないようです。

Q まだまだお話が尽きないようですが、本日はこれまでといたしましょう。