サービスは人間力

公共劇場従業員の接客の基本

関 賢栄


指定管理者制度が開始してから、公共ホールのみ従業員の態度に変化がありました。

格安な委託料金で契約されたところは、開き直ったように、利用者に無理難題をふっかけています。

志を抱いて契約したところは、利用者目線で接して利用者から好評です。 

 

サービスとは『相手に気を配って尽くすこと』です。

客を集めて儲ける商売には、これが必要なのです。また、接客は『相手を不機嫌にしないように接する』ことが基本です。

劇場技術者からすれば、観客だけでなく、出演者が劇場で気分良く過ごせるように計らうことも大切で、それは言葉遣いから始まり、依頼された仕事を敏速に達成することです。できることはすぐにやり、できそうなことは挑戦してみようという前向きな行動をすることが大切なのです。

そして、相手が求めていることを実現するのが不可能なときは、納得いただけるように分かりやすく説明するか、またはどのようにすれば可能になるかをアドバイスします。いきなり「決まりですから」「危険だから」「上司の許可が必要だから」などと言ったのでは角が立ちます。

相手がプロでないときは、専門家の「上から目線」ではなく、「相手の目線」で対応すれば巧くいきます。「素人にはわからないでしょうけど・・・」とは、口が裂けても言うべきでありません。断り方の上手な人がいます。そういう人は、自分たちだけしか通用しない専門用語を使ったりはしません。

つまり、煙に捲くようなことをしては、火に油を注ぐことになります。

  

経費節減のためにセルフサービスの店が増えています。メニューの上を電子ペンでタッチするとオーダーできる居酒屋もあります。

バス格安ツアーで、タラバガニやしゃぶしゃぶの食べ放題というのが定番になっています。

それらは料理ではなく食材を提供しているわけですから、プロの料理人の必要がないのです。食材をテーブルに運ぶだけで済むのですから、アルバイトでいいのです。

ボイルされた冷凍蟹を解凍すればよいし、冷凍された肉をスライスするだけが厨房の仕事です。つまり、人件費を削減できるから可能な格安プランなのです。客はひたすら食べて、食べた量で満足しているのですから、品質などそれほど気にしません。材料費を支払って食べているようなもので、そこの店員の笑顔などどうでもいいのです。

では、パソコンを利用して自動会館利用受付装置、駅の改札のような劇場の自動チケットテイク装置、最近では増えましたがクローク代わりのコインロッカーなどは、人件費節約にはなりますが味気ないものです。やはり、笑顔の人間力が欲しいですね。

レストランなどで利益を上げるには、食材の質を落とすか人件費の削減ですが、単に従業員の給料を低くしたのでは腕利きの職人はいなくなり、そして客が喜ぶ料理を提供できなくなり、信用を落とす破目になります。

食材が良くても調理が下手なら、その料理の値打ちはなくなります。その逆もあります。

どちらが営業上、好ましいのかはすぐに理解できるでしょう。

  

経済がバブルだったころ、とにかく大勢で賑やかに仕事をしていれば、アルバイトだろうと頭数だけのギャラを受け取ることができました。大掛かりなコンサートで、中身が空っぽのスピーカボックスを山積みしていても機材費が支払われた時代です。

しかし、不景気になるとそうしてはいられなくなりました。

バブル期以前の昔はどうであったかというと、腕利きの技術スタッフ数人で、ときには一人で、効率良く、要領良く仕事をやっていました。ギャラも高かったです。それを二束三文の世界にしてしまったのは、一体どなたなのでしょうか。

そして、いざバブルが弾けるとその人たちは、それまで見向きもしなかった劇場管理運営という3Kの仕事に群がり出したのです。

「貧すれば鈍する」がごとく、劇場の利用者を騙し、脅かして金をむさぼるような舞台管理会社も出没し、ひんしゅくを買っています。そのようなことをいつまでも続けていたのでは劇場技術者は破滅します。客の喜ぶ顔を見て嬉しくなれる劇場従事者が育つ環境を構築しなければなりません。劇場従事者にとって、出演者も主催者も外来スタッフも大切なお客様であることを自覚すべきです。

そのお客様方は、そこで働いているスタッフが財団の職員であれ、委託スタッフであれ、アルバイトであれ、区別して見ていないのです。

つまり、判別できないのです。

みんな劇場の従業員と見ているのです。

したがって、利用者は自分たちの要望を叶えてくれるプロのスタッフと思っています。そして、何でもできるエキスパートであるとも思っています。

 

さて、自分は周囲からどのように見られているのかを気にし始めたら、公共劇場の従業員として役に立つ「人財(じんざい)」に成長できると思います。